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COLUMNコラム

2022年9月6日

最新の再生医療 iPS細胞研究の今

iPS細胞は、私たちの体を構成する普通の細胞(体細胞)に山中因子と呼ばれる遺伝子を導入することで、さまざまな細胞になれる多能性を持たせた細胞です。この多能性により、iPS細胞から目的の細胞や組織を人為的に作り出すことができ、近年この技術は再生医療や創薬、生命科学など、多岐にわたる分野の研究で活用され始めています。

今回は、再生医療分野におけるiPS細胞の研究についてお話しします。


iPS細胞研究の現在

基礎研究でiPS細胞治療の安全性や有効性が確認できれば、実際に人(健常者や疾患のある人)に投与して試験(臨床試験)をし、安全性や有効性を確認します。臨床試験に際して、iPS細胞の品質を管理できる施設や、iPS細胞のもととなるヒトの細胞、高額な費用など、多くのものが必要になります。これらがハードルとなって、実施できる臨床試験は限られており、現在は網膜の疾患と脊髄損傷をはじめとして、いくつかの疾患において臨床試験が進められています。
以下、これまでに実施されている臨床試験の例を一部ご紹介します。

【網膜の疾患】
iPS細胞の臨床への応用は、眼科領域で最も進んでいます。
網膜は眼球の内側を覆う薄い膜状の組織で、光を感知する視細胞を含み、網膜の障害は視力低下や失明を引き起こします。iPS細胞から作った網膜の細胞を、網膜疾患患者に移植する治療法が試みられ、2014年に加齢黄斑変性症患者への移植手術が世界で初めて行われました。以来、理化学研究所や企業によって、加齢黄斑変性症や網膜色素変性症などの網膜疾患において臨床試験が行われています。

 

【脊髄損傷】
脊髄には、脳からの指令を全身に伝える神経が通っています。神経細胞は再生しないため、脊髄を事故などで損傷すると、運動能力が麻痺します。神経細胞のもととなる神経前駆細胞をiPS細胞から作り、脊髄の損傷部に移植する治療法が試みられ、2020年から慶應義塾大学で臨床試験が始まりました。脊髄損傷で一生車いす生活という常識が、覆される日も近いかもしれません。

 

【パーキンソン病】
パーキンソン病は、運動調節などを担うホルモンであるドパミンの不足により、筋肉のこわばりや振えなどを引き起こす疾患です。ドパミンを作る脳の神経細胞(ドパミン神経細胞)の異常が主な原因となっています。不足したドパミンを補うため、ドパミン神経細胞のもととなるドパミン神経前駆細胞をiPS細胞から作成し、パーキンソン病患者の脳に移植する治療法が試みられ、2018年から京都大学で臨床試験が始まりました。

 

【がん】
がんは、細胞分裂を制御する遺伝子が変異することで、細胞が無制限に増殖し、周囲の臓器や全身をむしばむ病気です。日本で最も多い死因となるほど私たちにとっても身近な病気です。
がん細胞への攻撃力が高いNK細胞や、がん細胞が持つタンパク質(がん抗原)を認識して攻撃するように改変された免疫細胞(T細胞、NK細胞)をiPS細胞から作り、がん患者へ投与する治療法が試みられています。これまで卵巣がんや乳がん、頭頚部がん、白血病など、さまざまながん治療の臨床試験や実用化に向けた研究が、国内外で行われています。

 

その他、軟骨の損傷や心臓疾患(心不全、虚血性心筋症など)、血小板減少症といった疾患で、iPS細胞治療の臨床試験が行われています。

 


今後の展望

上記の疾患の他に、I 型糖尿病や腎不全といった疾患でも臨床試験が計画されています。
またiPS細胞を使えば、患者自身の細胞から多様な細胞・組織を作れるため、臓器移植に活かせば、ドナーの不足や遺伝的な適合を気にする必要がなくなります。
現在は細胞を移植する臨床試験が行われていますが、将来的にはiPS細胞から臓器や組織を作って移植することを目標とし、研究が進められています。

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