コラム

iPS細胞で心臓病は治せる?

2024.4.15

私たちの生命活動は、様々な臓器の働きによって維持されています。その中でも、今回とりあげる心臓は、特別な臓器だと感じる人も多いはず。強いショックを受けたとき、「心臓が飛び出す」、「心臓が止まる」などと表現されるように、生きるために重要な心臓。もし病気になったら治すことができるのでしょうか?今回は、iPS細胞を用いた心臓病治療の現在を紹介していきます。

心臓病の再生医療

改めて説明する必要もないでしょうが、心臓は体中に血液を送り出すポンプの働きを担っています。私たちが生きている間中、休むことなく血液を循環させていて、文字通り心臓が止まってしまうと生きてはいけません。心臓の機能や構造の異常による病気には、心不全、心筋症、不整脈などがあり、総称して心臓病と言われます。

心臓病治療のひとつに、損傷した部位を補うための移植手術があり、再生医療が選択されることがあります。再生医療は、ドナー不足という問題を抱えていた臓器移植に代わる治療法として注目されています。既に製品化されている例として、心不全の治療に用いられる「ハートシート」という製品があります。これは、患者から採取した筋肉組織に含まれる細胞をシート状に培養したもので、心臓の表面に移植します。患者本人から採取した細胞を培養しているため、拒絶反応のリスクを回避できます。

iPS細胞の心臓病治療研究は進んでる?

iPS細胞を用いた治療も、既にいくつかの臨床試験が行われている状況です。iPS細胞は大量に培養できるため、再生医療を効率的で容易に実施できると期待されています。また、あらかじめ作製しておいたiPS細胞なら、手術が決まるとすぐに細胞の培養を始められるため、従来の再生医療と比較して、早期の治療開始も可能になるでしょう。

拡張型心筋症は、ポンプの収縮機能が低下することにより心室が拡張する病気で、根本的に治療するためには臓器移植が必要です。そこで、iPS細胞由来の心筋細胞のシートを患者の心臓に貼り付ける治療の開発が進められています。心筋細胞の移植では1つ1つバラバラの細胞を移植しても生着する細胞数は限られます。また治療に用いるには、混じり物のない純粋な心筋細胞を得る「純化精製」が肝心。それらの課題を克服して、現在では、医師主導による治験が既に実施されています。最近では、細胞のシートをさらに層状に重ねたものを作製するという技術もでてきています。

他のグループからは、iPS細胞から心筋細胞のかたまりを球状に培養して、これを患者の心筋内に直接注入する方法が検証されています。この研究では特殊な培養液によって、安価で簡単に純化精製することを可能にしており、動物実験で良好な結果が示されました。最新の報告によると、重度の心不全の患者に移植され、半年の経過観察を終えた患者3人のうち2人で機能の改善が見られ、3人ともに移植した心筋細胞が心臓の一部として機能しているようです。

海外にも目を向けてみますと、iPS細胞由来の心筋細胞とウシ由来コラーゲンのゲルとを混合した「人工心筋」を移植するというアイデアが理論的に示されています。現在は、他に有効な治療が見込めない心不全の患者を募っており、安全性や有効性の確認を目指しているようです。

まとめ

以上、心臓病の治療でiPS細胞が利用されている例をみてきました。失われた機能を取り戻すことができる再生医療は、心臓病の治療でも期待を集めています。症例数が少ないため、研究の積み重ねが必要ではありますが、治療効果に期待できる成果が得られつつあります。また、自家iPS細胞の場合では、若いうちに採取した、品質の良い細胞を治療に用いることができるというメリットもあります。

 
   
 

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