コラム

iPS細胞をつくれる細胞とつくれない細胞「赤血球からはiPS細胞をつくれない」

最終更新日: 2024年05月13日

「iPS細胞をつくれる細胞とつくれない細胞」として、iPS細胞の元になる(またはならない)細胞を紹介しています。前回はiPS細胞を作る材料として血液が適しており、広く使用されているというコラムを掲載しました。(前回のコラムはこちら

今回は「iPS細胞をつくれない細胞」として赤血球を紹介します。血液はもちろん赤いのですが、赤血球といえば血液が赤い源そのものです。血液の主成分とも言える赤血球。血液はiPS細胞の材料に適している、なのに赤血球からはiPS細胞をつくることができない。これはどういうことなのでしょうか?

この記事では、赤血球という細胞の特徴とiPS細胞の関係について紹介します。

血液の主成分である赤血球の働き

血液は液体成分である血漿と、細胞成分である血球に分けることができます。血球には赤血球、白血球、血小板の3系統がありますが、割合でいうと血球の約96%は赤血球です。血液の約40%は赤血球であり、血液1マイクロリットル(1ccの1000分の1)あたり450-500万個ほどの赤血球が存在します。

人の体には約5リットルの血液があるため、体全体には約20兆個の赤血球があることになります。人の体には37兆個の細胞があるとされていますが、半分以上が赤血球であることが分かります。

そんな赤血球が担う役割は、酸素と二酸化炭素の運搬です。私たちの体を構成する臓器や組織は、酸素を利用してエネルギーを産生し、二酸化炭素を排出します。赤血球は体の各臓器に酸素を送り届け、排出された二酸化炭素を回収します。非常に多数の赤血球は血液の主成分として、生命活動を根本から支えているのです。

赤血球には核がない?

動物の細胞は真核細胞と呼ばれ、内部に「核」を持っています。核の中にはDNAやRNAがあり、遺伝情報を宿しています。人の体はその遺伝情報を元に形作られています。

ところが、赤血球には核がありません。赤血球は造血幹細胞という血球の元になる細胞が増殖し、分化(成長)してつくられます。その過程で、核が無くなる(脱核といいます)のです。

なぜ核が無くなるのか、いくつかの説があります。効率よく酸素や二酸化炭素を運搬するため余計な体積を占める核を捨てた、毛細血管を通る時に赤血球が変形しやすくなるように核を捨てた、などの説があります。つまり赤血球は遺伝情報を捨て、酸素と二酸化炭素の運搬という役割に特化した特殊な細胞なのです。

赤血球からはiPS細胞をつくれない

非常に特殊な細胞である赤血球ですが、その特徴ゆえにiPS細胞の材料となることができません。通常、細胞の中には核があり、核の中にはDNA、そしてDNA上には遺伝子があります。iPS細胞は遺伝子に働きかけることで細胞をリプログラミング(初期化)し、人工的に作製する細胞です。

ところが赤血球には核やDNAがないため、リプログラミングすることができません。赤血球は増殖することができないので、iPS細胞の元になることができないのです。

歯や尿からiPS細胞をつくる

iPS細胞をつくることに適した細胞、それは採取しやすく、核を持ち増殖する能力のある細胞です。皮膚や血液(赤血球ではない、白血球や血管内皮細胞)はその特徴を有しているため、多く利用されています。

ただし皮膚の細胞や血液の細胞を採取するためには、皮膚の表面を一部切除する処置や針を刺して採血する処置が必要になります。体への負担はゼロではありません。

パーソナルiPSでは、歯や尿からiPS細胞をつくることが可能です。歯の細胞はiPS細胞を効率良くつくることのできる細胞であり、歯科治療や矯正などで抜いた歯から採取することができます。尿は日常的に排出しているため、体へ負担がかかることはありません。

尿からiPS細胞と聞くと、意外に思われる方もいるかもしれません。次回のコラムで詳しく紹介させていただきます。

 
   

 

あわせて読みたい:

iPS細胞をつくれる細胞とつくれない細胞「血液からiPS細胞をつくれるのはなぜ?」
iPS細胞は体にある細胞を元につくられます。体には数え切れないほどの細胞がありますが、iPS細胞をつくることのできる細胞と、そうではない細胞があります。iPS細…
personalips.com
私たちの体は数十兆個の細胞からできています。心臓や腎臓、筋肉や骨、神経など体を構成するあらゆる部分に細胞があり、それぞれ独自の働きをしています。
personalips.com