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COLUMNコラム

2023年6月5日

iPS細胞をつくれる細胞とつくれない細胞「生殖細胞からはiPS細胞をつくれない」

私たちの体は数十兆個の細胞からできています。心臓や腎臓、筋肉や骨、神経など体を構成するあらゆる部分に細胞があり、それぞれ独自の働きをしています。

体にある細胞に操作を加えてつくるのがiPS細胞ですが、実はどの細胞からでもつくれる訳ではありません。今回の記事から「iPS細胞をつくれる細胞とつくれない細胞」として、iPS細胞をつくる材料としての細胞に注目してコラムを掲載していきます。

この記事では、iPS細胞をつくることのできない細胞として「生殖細胞」を取り上げて紹介します。


iPS細胞をつくれない?

iPS細胞は、体の細胞にリプログラミング(初期化)する操作を加えることでつくることのできる「多能性幹細胞」です。既に成長(分化)した細胞を元の受精卵に近い形に戻すことで、多能性と増殖する能力を獲得するのです。iPS細胞をつくる原理や方法については以前のコラムをご参照ください。

iPS細胞とは?- 歴史や実用化についてわかりやすく解説 –

iPS細胞ってどうやって作るの?

私たちの細胞は一つ残らず全て受精卵から発生しています。元々の始まりが一緒なのですから、どの細胞からでもiPS細胞がつくれるはずです。ところが、そうではない細胞があります。なぜiPS細胞をつくることができないのでしょうか?


生殖細胞からはiPS細胞をつくれない

iPS細胞をつくることのできない細胞に「生殖細胞」があります。生殖細胞とは精子や卵子になる細胞のことで、遺伝情報を子へ伝える役割を持っています。生殖細胞はいわば受精卵の元となる細胞であり、強い多能性と増殖能を持っていそうです。しかし生殖細胞からiPS細胞をつくることはできないのです。

その理由は、染色体の数にあります。私たちの体にある体細胞(生殖細胞以外の全ての細胞)は親から受け継いだ46本の染色体を持っています。体細胞からiPS細胞を作成する場合、その46本の染色体にある遺伝情報を元にiPS細胞がつくられるのです。

しかし生殖細胞には23本しか染色体がありません。「減数分裂」という特殊な細胞分裂を経て生まれる生殖細胞は、体細胞の半分しか染色体を持たないという特徴があります。23本の染色体を持った精子や卵子は、もう1方の卵子や精子と受精することで、体細胞と同じ46本になり体を形作っていくのです。

23本の遺伝情報からiPS細胞をつくることはできません。不妊治療など様々な目的で凍結精子や凍結卵子が保存されているケースがありますが、それらを利用してiPS細胞をつくることはできないのです。

なぜ生殖細胞になる時、染色体が半分になるのでしょう。それは減数分裂を経て遺伝情報がシャッフルされることで、親とは異なった遺伝情報を子に持たせるためです。全く同じ個体ばかりが増えてしまうと種の存続に不利となります。同じ種でも多様性を生み出す仕組みとして、減数分裂は非常に巧みなシステムになっているのです。


歯や尿からiPS細胞をつくる

iPS細胞は生殖細胞以外の細胞、つまり体細胞からつくることができます。よく使用されるのは、血液に含まれている細胞や皮膚の細胞です。臓器や筋肉など体深くにある細胞と比較すると、細胞の採取がしやすいことが理由として挙げられます。

それでも血液を採取するためには体に針を刺す必要があり、皮膚の細胞を取り出すためには皮膚の表面を一部切除する処置が必要です。体への負担がないわけではありません。

パーソナルiPSでは体への負担をより少ないものにするため、尿や歯からのiPS細胞作成を行っています。

iPS細胞って何から作るの?

歯の根元には歯髄細胞(いわゆる歯の神経)があります。歯髄細胞は歯科治療や矯正などで抜いた歯から採取することができるため、余計にかかる負担がありません。また歯髄細胞はiPS細胞を効率よく作ることのできる細胞であり、iPS細胞を作る材料として適していることが分かっています。

尿は歯以上に採取がしやすい細胞源です。尿からiPS細胞と聞くと、意外に思われる方もいるかもしれません。後々のコラムで、詳しく紹介させていただきます。

 

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