そもそも幹細胞ってなに?幹細胞とiPS細胞の違いとは | 【公式】パーソナルiPS

COLUMNコラム

2023年5月22日

そもそも幹細胞ってなに?幹細胞とiPS細胞の違いとは

幹細胞とは、さまざまな細胞に変身できる細胞のことです。この変身能力により、幹細胞は医学研究や再生医療などの分野で使われています。

今回は、幹細胞の特徴や種類、iPS細胞との違いについて解説します。


幹細胞とは

幹細胞とは、多分化能と自己複製能を持つ細胞のことを言います。

分化とは、専門性のない細胞が、専門性を持つ細胞になることです。私たちの体の細胞は、それぞれに専門の仕事があります。例えば、神経細胞は電気信号を作り、免疫細胞は生体防御を担っています。幹細胞にはそういった専門性がない代わりに、複数種類の細胞に分化することができます。この能力を多分化能と言います。

自己複製能とは、細胞分裂を繰り返すことで、自分のコピーを増やす能力のことです。

幹細胞は私たちの体内に存在し、血液や皮膚、毛髪のように、生え変わりが盛んな組織の細胞を補充する役割を果たしています。


体性幹細胞の種類と役割

ヒトの体内にある幹細胞を体性幹細胞と言い、全身のいたるところに存在します。体性幹細胞にはさまざまな種類があり、それぞれが限られた複数種類の細胞に分化できます。

以下に、再生医療分野でよく使われる体性幹細胞をご紹介します。

【 造血幹細胞 】

骨髄(骨の中)に存在し、血中に含まれる細胞のもととなる幹細胞です。赤血球と血小板、すべての免疫細胞に分化します。

白血病などの血液病治療における造血幹細胞移植(骨髄移植)は、長い歴史を持つ再生医療です。

【 間葉系幹細胞(MSC) 】

骨髄や脂肪組織、歯髄(歯の中)、胎盤などの幅広い組織に存在し、脂肪細胞や血管の細胞、神経細胞、筋細胞、軟骨細胞、皮膚細胞などに分化します。

最近では心筋や血管の再生を目的として、心不全や動脈硬化の治療に使われ始めています。

【 神経幹細胞(NSC) 】

脳内に存在し、脳(神経組織)を構成する細胞のもととなる幹細胞です。神経細胞のほか、脳の構造を支えるアストロサイトや、神経伝達を速めるオリゴデンドロサイトに分化します。

最近のアメリカでは、ヒトの神経幹細胞を用いた脊髄損傷治療の臨床試験が行われました。


ES細胞とiPS細胞

近年、再生医療分野などでよく使われるES細胞とiPS細胞も幹細胞の一種です。これらは体性幹細胞と違ってほぼすべての細胞に分化することができ、それぞれ由来が異なります。

1つの受精卵が分裂を繰り返すと、細胞の増殖と分化が進み、さまざまな臓器を含むヒトの体が作られます。これは受精直後の細胞が、ほぼすべての細胞に分化できる幹細胞であることを示しています。この幹細胞を胚(受精卵が分裂を数日間繰り返してできた細胞の塊)から採取し、培養したものがES細胞です。

通常、受精直後にあった細胞の多分化能は、ヒトの体が完成に近づくにつれて失われていきます。最終的に細胞の役割や性質は固定され、皮膚の細胞は皮膚に、肝臓の細胞は肝臓にしかなれなくなるのです。こういった細胞の多分化能を、人の手でよみがえらせたものがiPS細胞です。分化できなくなった細胞に、リプログラミング因子(山中因子)と呼ばれる遺伝子を入れることで、再び細胞に多分化能を持たせることができます。こうして作られるのがiPS細胞です。

iPS細胞は尿や歯など、採取しやすい組織の細胞から作れるため、近年の再生医療や医学研究で盛んに使われています。 また他人の受精卵を使うES細胞に対し、患者本人の細胞からも作れるiPS細胞は、移植した際の免疫拒絶リスクがないと考えられるため、再生医療分野において更なる活用が期待されています。

 

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