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COLUMNコラム

2023年3月23日

iPS細胞を利用した医薬品開発

iPS細胞はからだのさまざまな細胞や組織に成長することのできる、万能な細胞です。その能力を生かした、ケガや病気が原因で失われた機能を取り戻すための「再生医療」が注目され目覚ましい発展を遂げています。

ただし、iPS細胞の利用法は再生医療だけではありません。再生医療が1本の柱だとすれば、もう1本柱となる利用法があります。それが、iPS細胞を利用した医薬品開発です。

iPS細胞と医薬品開発、頭の中ですぐに結びつかないかもしれません。しかし、iPS細胞の医薬品開発はあらゆる病気に応用できる可能性を持った、重要な研究分野の一つです。ここでは、iPS細胞を利用した医薬品開発について解説します。


iPS細胞でどうやって医薬品を開発するの?

iPS細胞は人の血液や皮膚、歯など採取が容易な組織から作ることのできる細胞で、組織を採取した人の遺伝情報を持っています。その性質を利用して、病気を持っている人の細胞からiPS細胞を作り、それを増やして成長させることで人工的に病気を再現することができます。

iPS細胞の医薬品開発では、そのようにiPS細胞を元に病気の性質を再現した細胞や組織に対して、さまざまな物質や薬剤を使用してその効果を確認します。これまで使用されていなかったような薬剤が思わぬ効果をもたらすこともあり、それが新たな医薬品開発へとつながっていくのです。


iPS細胞を医薬品開発に利用するメリットとは

医薬品開発にはさまざまな手法がありますが、従来から動物実験が大きな役割を果たしてきました。ケガや病気をマウスなどの動物で再現し、医薬品の効果を確認しようとする方法です。

しかし、動物のからだで人工的に病気を再現するのは簡単ではありません。うまく病気になってくれない、病気にさせることができてもすぐ死んでしまい実験ができない、など珍しい病気であるほどその再現は難しいのです。

一方で、すでに病気を発症している人の細胞からiPS細胞を作成すれば、その病気を人工的に再現することができます。血液や尿、抜けてしまった歯など患者さんに負担のかからない方法で採取した細胞から作成し、ほぼ無限に増やすことのできるiPS細胞を利用すればいくらでも薬品のテストをすることができます。

確実性高く病気を再現し、ほぼ無限に実験を繰り返すことができる。それがiPS細胞を利用した医薬品開発のメリットです。


iPS細胞で開発された医薬品は人への使用が始まっています

進行性骨化性線維異形成症(FOP)という難病があります。子供の頃から全身の筋肉や腱、靱帯が骨に変わりからだの動きが制限されてしまう病気です。200万人に1人程度の発症率と言われており、日本には60-84名程度の患者さんがいると推定されています。有効な治療法はなく、徐々に病状が進行し呼吸の障害や栄養の障害が原因で死に至ります。

マウスでFOPを再現しようとすると、生まれてすぐに死んでしまうため、研究をすることができませんでした。そこでFOPの患者さんの細胞からiPS細胞を作成、FOPの病状を再現したところで多数の物質や薬剤の効果をテストしたところ、ラパマイシン(シロリムス)というすでに他の疾患で使用されている治療薬の効果があることが分かったのです。

この研究結果を受けて2017年から京都大学附属病院では、FOPの方に対して実際に薬を使用する治験が開始されています。

同じようにして筋萎縮性側索硬化症(筋肉が徐々にやせる神経の難病)やペンドレッド症候群(難聴やめまいを起こす難病)の患者さんに対して、iPS細胞を利用した医薬品開発の治験が開始されています。


iPS細胞の医薬品開発は、あらゆる病気に応用できる可能性があります

iPS細胞の医薬品開発はその原理から考えると、あらゆる病気に応用できる可能性があります。実際に血液疾患や免疫疾患、筋疾患、呼吸器難病など多数の研究が提案され予算を獲得しています。

難病など珍しい病気ばかりでなく、認知症やパーキンソン病など患者さんの数が多い病気に対しての応用も検討される動きがあります。iPS細胞の作成や保管に関わる費用など課題はあるものの、今後の医療発展に大きな役割を果たしていく分野だと考えられます。

 

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